大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 平成6年(あ)582号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

理由

一  被告会社代表者兼被告人轟和治の上告趣意は、憲法三一条違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

二  なお、所論にかんがみ、職権により判断する。

1  映画著作物の著作権者から著作権の一部譲渡を受けたのではなく(著作権法六一条一項参照)、独占的にビデオグラムの形態により複製・頒布・上映することを許諾されたいわゆる独占的ビデオ化権者であっても(同法六三条一項参照)、著作権者の許諾を得ていない者によって当該映画著作物がビデオ化され、著作権が侵害された場合には、刑訴法二三〇条にいう「犯罪により害を被った者」に当たり、告訴権を有すると解するのが相当である(最高裁昭和四四年(あ)第一五九〇号同四五年一二月二二日第三小法廷判決・刑集二四巻一三号一八六二頁参照)。したがって、株式会社バンダイによる本件告訴が有効であるとした原判断は、結論において正当である。

2  著作権法一一三条一項二号(昭和六三年法律第八七号による改正前のもの)にいう「著作権を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布する行為」が同法一一九条一号(平成四年法律第一〇六号による改正前のもの)にいう著作権の侵害に当たるとした原判断は、正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 大野正男 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例